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石川銀行破綻の爪痕6(2)
6.借入申込書の作成(2)
(2)借入申込書の中身
平成13年に金融庁の主導で「私的整理ガイドライン」が策定された。これは法律ではないものの、実質的に日本全国の金融機関の行動を拘束するもので、このガイドラインには、金融機関が取引先の中小企業を支援するのか、或いは切り捨てるべきなのか、の判断基準が示されている。
従って借入申込書には必然的に
「私どもはガイドラインをクリアしています。ですから支援をお願いします」
という内容を書いていくことになる。
具体的には、以下の二つである。
① 実質債務超過の解消年数
② 借入金の償還年数
① 実質債務超過の解消年数
前述のようにSPCとの契約には劣後債務が残っていたので、決算書の貸借対照表には、石川銀行時代と同じ5億円の負債が計上されたままであった。
劣後債務を考えるとM社長の会社は大幅な債務超過となってしまい、ガイドラインで求められている「実質債務超過の解消年数=概ね3年以内」をクリアできない。
そこで今までの経緯を詳述し、SPCに請求意思が無いこと、課税回避のための工夫に過ぎないこと、を説明した。
更に、企業再生に詳しい弁護士の意見書を付けていった。
「法的には債務は存在するが実質的には請求されない」 という内容の意見書である。
② 借入金の償還年数
劣後の債務が法的には存在するので、これを考えれば、償還年数は30年を下らない。
ガイドラインが示す「借入金の償還年数=概ね10年」からは程遠い。
これについても上記同様に説明を行った。
・・・・・・・・・・・・・ No.22
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石川銀行破綻の爪痕6(1)
6.借入申込書の作成(1)
「優先債務を借り換えたい」というM社長の要望を請けて、我々は融資申込書の作成に取り掛かった。平成21年6月のことである。
経営者や多くの再生アドバイザーが見過ごしていることの一つに、「書面」 の重要性がある。
(1)借入の申込みを 「書面」 で行うことの重要性
融資の申込みに行った時に、決裁権者である本店審査部門の担当者や支店の支店長が対応してくれることは有り得ない。通常は、お客様に一番近いところに座っている若手の融資課員が対応することになる。
懸命に事情を説明しその課員を納得させる事が出来たとしよう。
シャッターが閉まり重要書類の保管が終わる夕方以降になって、課員は上司に融資の申し出を報告する事になる。
しかし、こと融資の現場においては
「向こうからやってくる融資申込客は要注意」
であるのは常識となっている。こちらから申込みに行く時点で既に色眼鏡で見られている(警戒されている)のである。
報告を受けた融資課長に話が伝わる頃には、窓口で課員に熱意を以って伝わったはずの内容が半分ほどに減っている。融資課長の次は次長または副支店長である。
彼らに伝わる頃にはもう元の話は20%ほどに減っている。
支店長に伝わる頃には、跡形も無く、従ってその案件は否決される。
金融機関の人事査定は極端な減点主義であるから誰もがリスクを取らない。
その結果「向こうからやってくる怪しい客」の話をまともに取り合ってくれることは滅多にない。
こういう金融機関の内情を考えれば、書面で提出することの意義が分かって頂けると思う。書面の中で伝えたいことを100%書いていけば、その内容が保身に走る金融マンによって減らされることもなく、最終決裁権者にまで届く。
・・・・・・・・・・・・・ No.21
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石川銀行破綻の爪痕5
5.現状分析
(1)債務の増加
KPMGフィナンシャル(以下、SPC)は、整理回収機構から10社120億円程度の債権をいくらかで買い取り、そこに利益を乗せてM社長他10社に請求しているようであった。
M社長の銭湯の債務は元々5億円だったのであるが、SPCのスキームでは、10社が互いに連帯保証をする契約になっていた。
即ち、M社長の銭湯の債務5億円がいつの間にか10社分(約20億円)に膨れ上がっていたのである。
ところがM社長は、全くこの事に気付かずに数々の契約書に押印をしており、私が解説をして初めて「そうだったのですか」と驚いていた。
(2)債務の圧縮
M社長の借金は元々5億円であった。SPCは、この債務を時価に引き直した。
即ち、実際に回収出来そうな金額1億円(優先債務)と残額4億円(劣後債務)に分け、優先債務を当初の10年間で返済させて、残りを11年目から5年で返済させるというスキームであった。
残額の4億円を放棄してしまうと債務免除益や贈与の問題が発生するので、契約書上は劣後債務もキッチリと残してあった。
劣後債務を回収する意思が無いことは、
① 優先債務を完済すれば銭湯に設定した抵当権を解除すること、
② 劣後債務を請求したのでは「圧縮スキーム」が無意味になること、
から明らかであった。
しかし、SPCが劣後債務を残したことで我々は、後々大変な苦労をすることになる。
・・・・・・・・・・・・・ No.20
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石川銀行破綻の爪痕4
4.相談の背景
知人の事務所に入ってきたM社長は、ファイル1冊分のKPMGフィナンシャルとの契約関係の書類を拡げ始めた。
「木村さんには、5億円の借金を1億円にしてもらいとても感謝している」
「けれども最近では売上が落ちて、その1億円の返済がしんどい」
「また、木村さんの会社は銀行ではないので、改装資金などの新たな融資が受けられない」
要するに、
① 当初10年で返済する予定だったものがしんどくなった、借り換えをして再度10年程度で返済をしたい(既に4年経過していたので、14年返済に組み直すようなもの)
② 今後の借入のために普通の金融機関と付き合いたい。
という二つがM社長の希望であった。
・・・・・・・・・・・・・ No.19
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石川銀行破綻の爪痕3
3.木村剛への再生相談
整理回収機構から10年以内での返済を求められたM社長は困り果てた。
今までは20年、30年のつもりで返済していたのに、いきなり返済額が2倍3倍になる訳で、当然のことながら返済が出来ない。
同様に整理回収機構送りになったモーテル経営者の中に、木村剛(日本振興銀行元会長・2010年7月検査忌避容疑で逮捕)を知っている者がおり、機構送りになった10社ほどで相談に行くことになった。
日本銀行を辞めて金融コンサル会社KPMGフィナンシャルを経営していた木村の作った再生シナリオは以下の通りであった。
① KPMGフィナンシャルが整理回収機構から債権を買い取る
② 債権を時価(返済可能な金額)に引き直し、各社に請求(返済期間10年)
③ 時価を超える部分は、放棄すると免除益課税が発生するので劣後債権として残す
石川銀行からの5億円の借入金を
→ 整理回収機構が格安で買取
→ KPMGフィナンシャルが譲受け
→ 自分たちの利益を乗せてM社長に請求(1億円)
→ 差額の4億円は免除すると税金が発生するので契約書には残す
こういうシナリオのようであった。
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